二酸化塩素とは/Cio2

化学的性質と効果

二酸化塩素燻蒸 VS ホルムアルデヒド VS 過酸化水素

バイオロジカルセーフティキャビネットで用いる場合、二酸化塩素・ホルムアルデヒド・過酸化水素の比較すると以下の表のようになります。
簡単な表ではありますが、二酸化塩素がNSF・EPAの規格認可を受けている点、浸透性や拡散性の点でホルマリンの有効性を継承しつつ、ホルマリンのように発ガン性がなく、作業時間も短時間で済むなど安全性と利便性の点で優れています。

  二酸化塩素 ホルマリン 過酸化水素
曝露基準(OSHA 8hr TWA) 0.1ppm 0.75ppm 1.0ppm
臭気による検出の可否 ×
燻蒸時間 3~4時間 9~15時間 4~7時間
発ガン性 なし あり なし(※ACGIHではあり A3)
水への浸透性 ×
油への浸透性 × × ×
拡散性 ◯(ガス) ◯(ガス) ×
緊急時換気時間 5~30分 1時間 1~6時間
残留物 なし あり なし
NSF規格認可 ×
EPA規格認可 ×

出典:A Discussion of Biological Safety Cabinet Decontamination Methods: Formaldehyde, Chlorine Dioxide, and Vapor Phase Hydrogen Peroxide


NSF/ANSIによって規格化されている二酸化塩素ガスによる滅菌方法

NSFとは、公衆安全衛生の分野で国際的に認められた第三者認証機関で非営利団体です。
NSFは過去50年間にわたり、各業界、政府関係者及び関係団体などと協力して、公衆安全衛生に係わる規格を制定し、これらの規格をもとに製品認証業務を 行っているほか、マネジメントシステム審査・登録、教育・訓練、検査や研究などを行っています。
NSFは、ANSI(米国規格協会)、SCC(カナダ規格評議会) から、試験、規格開発、認証プログラムについて認定を受けています。 また、飲料水および食品の安全に係る分野における経験および専門家としてWHO(世界保 健機関)の協力センターに指定された機関でもあります。
このNSF/ANSIに登録された共通規格として二酸化塩素ガスによるバイオセーフティキャビネット(安全キャビネット)の滅菌方法が登録されています。
安全キャビネットとは研究機関などにおいて、取り扱う微生物による感染リスクや有害性が考えられる未知の新規微生物などあらゆる微生物の漏出・暴露・感染 などのリスクから作業者を守る装置であり、この規格が要求する水準は既知であるか未知であるかを問わずあらゆる微生物に対して有効な手段であることが当然に 求められる厳格なものです。
前ページの表に記載した通り、過酸化水素による方法はNSF/ANSIの規格として認められておりません。
EPAによる二酸化塩素ガスの登録「manufacturing(製造業)」「laboratory equipment(研究設備)」「environmental surfeces(環境表面)」 「tools(器具)」「clean room(クリーンルーム)」に加えて、NSD/ANSIの安全キャビネットの滅菌を加味して検討すれば、国際的に二酸化塩素ガスによるあらゆる場所・器具の殺菌方法として認識されていることは自明です。


NSF/ANSIによる具体的な処理濃度と接触時間

NSF/ANSI 49 - 2008 Biosafety Cabinetry: Design, Construction, Performance, and Field Certificationによれば、二酸化塩素ガスによる除染時には以下 の表に示す濃度と接触時間を維持することが定められています。

  濃度(mg/L) 接触時間(min) CT(mg/L×min)
二酸化塩素ガス 5 45 225
3 60 180

二酸化塩素による一般的なウイルスおよび微生物不活化効果

EPA(アメリカ環境保護局)が定めた水道水の水質管理方法に関するマニュアル「EPA Guidance Manual LT1ESWTR Disinfection Profiling and Benchmarking」によれば、 二酸化塩素によってウイルスを99.99%不活化するために必要とされるCT値(濃度mg/l×接触時間min)が定められています。
ここで定められているウイルスとは、同じくEPAのガイドラインによれば、「糞便由来のウイルス」と記載されており、ガイドラインの性質上エンベロープの有無 といった消毒剤に対する感受性の差ではなく、病原性の点からそれらのウイルスを不活化するために必要なCT値が定められています。
従って、このようなウイルスとは例えばポリオウイルス・A型肝炎ウイルス・ノロウイルス・ロタウイルスなどエンベロープの有無に拘らず広範なウイルスが該当します。
また、同マニュアルには一般的にウイルスよりも消毒剤に対して耐性を有するクリプトスポリジウムやジアルジアに対する二酸化塩素のCT値が定められています。


表1 CT VALUES FOR 4-LOG INACTIVATION OF VIRUSES BY CHLORINE DIOXIDE pH 6-9

温度(℃)
<=1 5 10 15 20 25
50.1 33.4 25.1 16.7 12.5 8.4

表2 CT VALUES FOR 3-LOG INACTIVATION OF GIARDIA CYSTS BY CHLORINE DIOXIDE

温度(℃)
<=1 5 10 15 20 25
63 26 23 19 15 11

表3 CT VALUES FOR 3-LOG INACTIVATION OF CRYPTOSPORIDIUM BY CHLORINE DIOXIDE

温度(℃)
<=1 5 10 15 20 25
1830 1286 830 536 347 226

引用:EPA Guidance Manual LT1ESWTR Disinfection Profiling and Benchmarking


二酸化塩素による空間衛生管理の有効性

クリーンケアでは二酸化塩素による空間の衛生管理を提案します。
厨房・学校・社会福祉施設・病院・食品加工場・畜舎など本当に衛生管理の必要のある箇所では二酸化塩素が最良の選択肢となりえます。

実証

クリーンケアでは、二酸化塩素による効果を実証するために、経済産業省ものづくり実証支援事業の一環として、多くの試験を実施するとともに、実際の鶏舎・学校・病院など他社ではあまり実施してない実際の空間でも効果を検証しています。
これらの試験により、二酸化塩素による管理によって、試験機関などの小規模な試験だけでなく、実際の使用空間においても、十分な効果が発揮できることを確認しています。

実施試験リスト

  • (財)日本食品分析センター「A型インフルエンザウイルス不活化効果試験」
  • (財)日本食品分析センター「ネコカリシウイルス不活化効果試験」
  • (財)日本食品分析センター「抗菌力試験ークロコウジカビ」
  • (財)日本食品分析センター「抗菌力試験ーアオカビ」
  • (財)日本食品分析センター「抗菌力試験ークロカワカビ」
  • (財)日本食品分析センター「抗菌力試験ー芽胞菌」
  • (財)日本食品分析センター「抗菌力試験ー大腸菌」
  • (財)日本食品分析センター「抗菌力試験ーサルモネラ」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ーメチルメルカプタン」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ーアンモニア」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ー硫化水素」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ー硫化メチル」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ー二流化メチル」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ーアセトアルデヒド」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ートリメチルアミン」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ーキシレン」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ートルエン」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ースチレン」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ーエチルベンゼン」
  • (財)日本食品分析センター「脱臭効果試験ーノネナール」
  • (財)日本食品分析センター「二酸化塩素徐放性試験ーゲルタイプ」
  • (財)日本食品分析センター「二酸化塩素徐放性試験ーゲル生成タイプ」
  • (財)日本食品分析センター「二酸化塩素徐放性試験ークリーンケアタイプ」
  • (財)日本食品分析センター「殺菌効果試験ーレジオネラ菌」
  • (財)日本食品分析センター「殺菌効果試験ー大腸菌O157」
  • (財)日本食品分析センター「殺菌効果試験ーサルモネラ」
  • (財)日本食品分析センター「殺菌効果試験ー腸炎ビブリオ」
  • (財)日本食品分析センター「殺菌効果試験ー黄色ブドウ球菌」
  • (財)日本食品分析センター「二酸化塩素濃度の測定」
  • 畜産試験所「鶏舎空間の浮遊落下細菌・アンモニア濃度の検証」
  • 学校教室内の二酸化塩素管理による欠席児童数の変化
  • 病院内空間の付着細菌数検査

試験機関による効果試験

日本食品分析センターでは、衣服やマスク、壁や器具に付着した細菌・ウイルスに対する有効性を確認するために、不織布に菌液・ウイルス液を付着させた状態で効果を検証しています。
以下のグラフ1、グラフ2は各種細菌・悪臭物質に対する二酸化塩素ビーズの効果を食品分析センターで測定した結果です。

脱臭率・付着抗菌率グラフ

空間衛生管理に用いられる各種物質の特徴と比較

二酸化塩素以外にオゾン、クラスターイオン、光触媒など様々な物質が空間の衛生管理として提案されています。
そこで、微生物に対する効果、悪臭やアレル物質に対する効果、安全性。さらに対象となる微生物が水中に存在するのか、空中に浮遊しているのか、あるいは器物に付着している状態なのかといった空間衛生を提案する上で必須の視点から、各物質を比較します。

評価軸

評価 説明
試験機関による効果検証・実際の使用を想定される空間での効果検証・利害関係者以外の国際機関などでの評価試験・実用上の安全性の各点で有効性が確認されている。
(例:製造元の試験だけでなく、WHOなどから有効性を検証した報告がある。国際的に利用実績があるなど)
試験機関による効果検証はあるが、実際の空間や利害関係者以外の機関における評価などがなく、効果があることが推定されるが、有効性が示されていない場合。
(例:製造元が依頼した殺菌効果試験などはあるが実際の使用現場におけるテストなどはない。)
有効性を示す試験が試験機関による小規模なものにとどまり、実際の空間で有効性を示すためには何らかの特別な条件が必要とされる場合。
(例:試験での濃度が実際の製品濃度より高い場合や、効果を発揮するために長時間必要な場合など)
× 試験自体が十分ではなく、有効性も使用空間において限定的であるかまたはあまり期待できない場合。
(例:殺菌作用ではなく静菌作用であったり、室内での使用でありながら紫外線が必要であるなど)
試験自体実施していないか、公開されておらず評価自体が困難である場合

※評価にあたっては、国内外の文献や公的機関等の公開されている資料をもとに作成しています。
例えば、オゾンであれば、水道水の消毒や食品添加物としての安全性が認められている一方で、日本オゾン協会の安全性基準値などでは、0.1ppm以上であきらかな人体への影響が明記されており、家庭用のオゾン発生器ではこれらの濃度を超えてしまう製品の危険性が国民生活センターから発表されています。
そのため、家庭用として手軽に使えないなどの点も考慮して評価を行っています。光触媒の場合、可視光応答性光触媒ではない通常の光触媒製品についての評価です。
光触媒作用は基本的にその加工を施した表面でのみ発生する作用であるため、その点を考慮して評価を行っています。電解次亜塩素酸は電気分解によって次亜塩素酸を作るため、基本的な作用は次亜塩素酸と同様と考えています。
各成分の効果は明らかであるものの、実際の空間での試験や気体として利用できるものなのかといった点も踏まえて評価しています。
これらの評価はあくまでも個々の物質についての評価であって、これらの物質を利用した製品を販売している、各製造元の製品に対する評価ではありませんので、詳しくは各自で調べて必要であれば製造元などに問い合わせしてください。

評価結果

上記の評価軸に基づいて各物質を評価したものが表1です。

表1 微生物への効果 その他の効果 作用の状態 安全性
細菌 抗酸菌 芽胞菌 真菌 ウイルス 消臭 アレル物質 水中 空間 付着
二酸化塩素
オゾン × × ×
光触媒 × ×
電解次亜塩素酸
クラスターイオン ×
納豆菌 × × × × ×
評価結果円グラフ