製品詳細/Product

建物の燻蒸

燻蒸と煙霧(噴霧)の特性

二酸化塩素は物性から煙霧(噴霧)でも燻蒸でも、日常の生活環境温度下で使用可能です。
大空間の殺菌に近年用いられるグルタルアルデヒドや過酸化水素の場合、物理的にガス燻蒸はできないため、
煙霧(噴霧)機の性能によって鶏舎内で濃度の濃淡が生じます。

使用方法別の特徴
  燻蒸 煙霧/噴霧
特徴 空間全体に均一に広がるため効果的な殺菌が可能 機器の性能、鶏舎の大きさにより濃度にばらつきが生じる。
機器の近くでは、薬液の漏れや高濃度化による問題が生じる場合もある。
ClO2
グルタル
アルデヒト
×
過酸化水素 ×

二酸化塩素は、煙霧(噴霧)機による作業でも、噴霧時の圧力と温度により、実質的に燻蒸に近い状態になるため、使用する機器を問わず殺菌効果への影響は少なくなります。しかし、グルタルアルデヒドや過酸化水素では、物理的性質により、均一に噴霧できるかどうかが直接殺菌効果に影響します。一方、二酸化塩素を用いる二酸化塩素燻蒸剤は機器も不要で、燻蒸による均一な処理が可能な上に、作業も簡単で効果的です。

燻蒸と煙霧(噴霧)の特性


二酸化塩素燻蒸の実際

一例としてEPAで登録されている二酸化塩素の具体的な使用方法や登録商品のリストがありますので、
その内容を以下に詳述します。

EPA(米国環境保護局)二酸化塩素製品の畜産業向け使用認可用途の抜粋

EPAでは二酸化塩素による燻蒸・煙霧・噴霧・浸漬・水消毒・泡洗浄など およそ考えられるすべての用途が認可されていることがわかります。

 
認可用途(EPA) 適用方法 使用時の制限事項
空間燻蒸 1000ppm
(使用方法問わず:燻蒸/噴霧/浸漬/他)
すべてのゴミ・糞便肥料を除去後に使用
300~500ppmの二酸化塩素溶液を噴霧器で
床・壁あらゆる設備の表面に噴霧
すべのゴミ・糞便肥料を除去後に使用。噴霧後は水で洗い流す。
空間の臭気・細菌の制御 煙霧機を用いて燻蒸 すべてのゴミ・糞便肥料などを除去後、石けんなど洗浄剤と清潔な水で洗い流す。
インキュベーター室・洗浄室 高圧煙霧
①事前洗浄として20ppmで噴霧
②床面に390ppmで噴霧
③煙霧機で1000ppmを煙霧
制限なし
運搬車の消毒 二酸化塩素泡洗浄(接触時間10分以上) 洗浄前にほこりや汚れを洗い流す。
従事者の手指消毒 50ppm溶液に浸漬 制限なし
飲水 汚れた水に対して5ppmになるように二酸化塩素溶液を添加し、0.5~1.0ppmに調整する。 制限なし
踏み込み層 1ガロンに対して1~2オンスを添加 毎日または水に汚れが浮いてきた場合は液を交換する。
冷却水の消毒と屍鶏の消毒 0.5~3ppmの二酸化塩素濃度に冷却水を維持する。
70ppmの濃度を屍鶏に噴霧
制限なし
EPA法的認可状況の一覧

EPAでは対象となる微生物に対して、その製品が有効であるかどうかを認可という形で示しています。以下の表はEPAに登録されている製品のうち、二酸化塩素を用いた製品のリストです。
あらゆる微生物を完全に殺菌できるとされるのは、”Sterilizer”として登録されている製品になります。このクラスの製品は、医薬品の製造現場など、99.9999%以上の無菌性を保証しなければならない水準の用途に用いることができる製品です。ListB Tuberculocideとされる製品は、結核菌など抗酸菌など芽胞に次いで殺菌が難しい菌に対して有効な薬剤のリストです。
ハイペロックスの場合、主成分は過酸化水素と過酢酸であり、同様の成分で”Sterilizer”として登録されている製品もありますが、ハイペロックスは一般的な細菌・真菌・一部のウイルスに有効な薬剤として登録されていることがわかります。

各製品のEPA登録カテゴリ一覧
製品名 二酸化塩素製品 ハイペロックス
CSI CD
Cartridge
Alcide Expor Aseptrol OXINE ANTHIUM
DIOXIDE
SC CARtridge
EPA Reg. No 80802-1 1677-216 70060-19 9804-1 9150-2 87506-1 71654-14
List A 滅菌剤
Sterilizer
       
List B 結核菌
Tuberculocide
         
消毒剤
Disinfectant
   
殺菌剤
Antimicrobaial
           
殺菌剤
Bacteriocide
           
殺カビ剤
Fungicide
 
カビ抑制剤          
静菌剤
Bacteriostat
         
殺ウイルス剤
Virucide
   
濃度と接触時間

“List A 滅菌剤 Sterilizer”として記載されている製品を含め、二酸化塩素以外でも過酸化水素、ホルムアルデヒドなどの成分で滅菌(99.9999%以上)の無菌性保証水準の処理が可能です。
それぞれの薬剤はその物性によって処理時の濃度や暴露に要する時間、安全性などが異なります。以下の表は各薬剤の特徴と滅菌処理時に必要なCT値をまとめたものです。

  CIO2 過酸化水素 ホルムアルデヒト オゾン
OSHA TWA 0.1ppm 0.1ppm
(EU:0.5ppm)
0.75ppm 0.1ppm
臭気検知(※1) ×
燻蒸時間 3〜4時間 6〜12時間 12時間< 6〜72時間
発ガン性 なし:ACGIH
なし:OSHA
なし:ACGIH
なし:OSHA
あり なし
空間拡散性 ○(気体) ×(蒸気) ○(気体) ○(気体)
水浸透性 ○(溶解性大) ×(蒸気) ○(気体) ○(気体)
換気時間 30〜60分 24時間 1時間< 30分〜60分
処理濃度 360ppm 750ppm 8000ppm 20〜1000ppm
CT:99.9999
(ppm×hour)
1080〜1440 4500〜9000 96000 1440〜6000

※1:安全性の基準値以上の時、各成分を感覚的に検知できうるかどうか。二酸化塩素の場合、0.1ppm

当然のことですが、 滅菌レベルを要求した時はCT値がすべての薬剤で非常に高い処理濃度を要求していることがわかります。また、処理濃度で言えば、過酸化水 素やホルムアルデヒドは、二酸化塩素よりも高い濃度が必要な薬剤であることがわかります。

二酸化塩素燻蒸剤の場合、CT(ppm×min)値の水準は200~250程度になり、これまでに実際の鶏舎で実施した試験結果を踏まえると99~99.99%程度の殺菌 効果が得られる水準であると考えられます。


二酸化塩素燻蒸剤と従来法の比較

殺菌効果の比較

二酸化塩素燻蒸剤はこれまでに多くの現場で用いられており、その効果と使い勝手の良さで他のグルタルアルデヒドや過酢酸、オゾン、過酸化水素などよりも優れています。

腐食性

二酸化塩素は酸化作用を有しますので、当然金属に対する腐食性の問題を検討しなければなりません。一般的には、金属を腐食する強さとして酸化還元電位を調べます。
酸化作用を有する殺菌剤のうち、オゾン・過酢酸・過酸化水素・次亜塩素酸・二酸化塩素の酸化還元電位を比べると以下の表のようになります。

酸化剤 酸化還元電位(Volt)
オゾン 2.07
過酢酸 1.81
過酸化水素 1.78
次亜塩素酸 1.49
二酸化塩素 0.95

この表が示す通り、オゾンはもっとも酸化力が強く、従ってもっとも金属に対して腐食性があります。
一方で二酸化塩素は、次亜塩素酸や過酸化水素と比較しても金属への影響の少ない物質であることがわかります。
実際、二酸化塩素燻蒸剤を鶏舎で使用した場合でも、特に高濃度の二酸化塩素ガスに暴露する反応容器から周囲半径1.5m以内で、かつ、塗装やメッキなどがされていないむき出しの鉄製機材以外では、金属の腐食はほぼありません。また、これらの鉄製の機材であっても防錆スプレーや2m程度反応容器から離せばほとんど腐食することはなくなります。


結論

二酸化塩素による燻蒸/煙霧などを行う衛生管理手法は、米国において一般的な空間衛生管理方法として法的に認可されています。従来医薬・工場などで用いられていたホルマリンにより燻蒸が発がん性などの問題により、法的に使用が難しくなっており、その代替する薬剤として、二酸化塩素による燻蒸が最も有力です。国際的には二酸化塩素による燻蒸は、バイオセーフティキャビネット内でも公的に用いられ認可されています。
二酸化塩素は常温で気体であり、物理的性質がホルマリンに近いため、他のグルタルアルデヒドやオゾン・過酢酸などと違い、機器なども不要であり、作業が比較的簡単でありながら高い効果がある点で優れた薬剤です。
懸念される金属腐食生に関しても、他の過酢酸や過酸化水素・次亜塩素酸などと比べると腐食は少なく、しかもガスで用いるため噴霧と異なり析出した塩の影響などはなく安心して用いることができます。