国内外の法的位置付け
国内消毒関連法規の整理- 詳細
二酸化塩素ガスの鶏舎使用の法的可否- 詳細
米国法における二酸化塩素燻蒸の認可状況- 詳細
- EPAにおける具体的な
二酸化塩素の使用方法について - 詳細
国内消毒関連法規の整理
薬事法・感染症予防法・伝染病予防法(廃)・家畜伝染病予防法・食品衛生法の立法趣旨や対象等文言の詳細は
後段の参照1:法令の抄録と解説に詳述しますので、そちらを参考にしてください。
ここでは、それぞれの法規の要点を概略で説明します。
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薬事法 |
感染症予防法 |
家畜伝染病予防法 |
食品衛生法 |
対象 |
ヒト(動物)に用いる薬剤 |
感染症とその予防及び対策 |
家畜伝染病及び患畜 |
食品の衛生 |
環境消毒 |
管轄外(※1) |
管轄内(※2) |
管轄内(※2) |
管轄外 |
消毒剤の定め |
あり(医薬品等として※3) |
なし |
なし |
なし(食品添加物としてはあり) |
概要 |
薬事法とはヒト(動物)に用いる薬剤を定義しているため 本質的に環境消毒に用いる薬剤については立法範囲外になります。 |
感染症を定義した上で、その蔓延を予防し、発生した場合にはその対応方法を行政府のとりうる措置という観点から定めています。
また、何らかの感染症が発生したときに使用すべき消毒剤などの定めはありません。 この意図は科学の進歩により、改良が進むため現場判断でその都度最適な消毒剤を選択する事を求めているからです。
そのため廃法になった伝染病予防法に記載されていた法定消毒薬という概念は廃止されました。 |
感染症予防法の家畜版。基本的には感染症が発生した時の対応を定めており、日常時の環境消毒に用いる薬剤に関して定めなし。 |
食品に直接使用する場合にのみ対象となる食品に対する添加物であるかどうかが問題であって、それ以外については食品に影響がない範囲であれば環境消毒について定めなし。 |
※1:環境消毒を目的に登録する事は可能であるが、立法趣旨および対象からは厳密には外れるため。
※2:感染症が発生した際に国・行政府・個人などが採るべき対策という趣旨から法律が構成されており、環境の消毒については「感染症が発生した際に」現場で最適な薬剤を使用することを求めている。例えば口蹄疫が発生した際には消石灰の撒布が対策として示唆されるが使用する消石灰は医薬品である必要はない。
※3:ただし医薬品の成分などを定めている日本薬局方には二酸化塩素による滅菌が記載されている。
二酸化塩素ガスの鶏舎使用の法的可否
二酸化塩素ガスおよび溶液がその有効性に基づいて、国内外で使用が法的・公的に認められているかを確認します。
まず、日本薬局方によれば微生物殺滅法のガス法に同法によって滅菌用に用いるガスの選択肢として二酸化塩素が記載されています。(局方第16版p2042)
同ガス法で滅菌用ガスとして記載がある薬剤は、酸化エチレン・ホルムアルデヒド・過酸化水素・二酸化塩素の4種類のみであり、鶏舎で広く用いられているグル タルアルデヒドは効果の面で劣るもしくは化学的性状の違いなどの理由から薬局方には記載されていません。
また、厚生労働省管轄の「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」によれば、アイソレータ設備の除染剤として、過酸化水素・過酢酸・オゾンとともに 二酸化塩素も明記されています。
さらに、WHOガイダンスを邦訳した「生物・化学兵器への公衆衛生対策」という報告書にも、「汚染された部屋や建物へは、酸化エチレン・ホルマリン蒸気・二 酸化塩素を用いた燻蒸消毒で芽胞を非活性化することが可能である。(p216)」と記載されています。
国内文献における二酸化塩素ガス滅菌法への言及の例
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滅菌剤として記載されている薬剤 |
日本薬局方 |
酸化エチレン・ホルムアルデヒド・過酸化水素・二酸化塩素 |
無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針 |
過酸化水素・過酢酸・オゾン・二酸化塩素 |
生物・化学兵器への公衆衛生対策(WHO) |
酸化エチレン・ホルマリン蒸気・二酸化塩素 |
これらの記述から明らかなように、二酸化塩素ガスはあらゆる微生物を殺滅させうる物質であることが日本でも公に認知されています。
米国法における二酸化塩素燻蒸の認可状況
二酸化塩素は溶液またはガスとして米国では1920年代以降広く使用されており、現在では様々な用途や製品がEPAの許認可を受けています。
米国企業の統計にある使用量算定では、二酸化塩素の世界消費量は約2百万kg/day。2000年に空気中に放出された二酸化塩素の総量は、337tという膨大な量が使用されています。
二酸化塩素の米国における法的な認可は今から約100年ほど前から進んでおり、 まず飲料水の消毒剤として認可されました。
その後、パルプの漂白剤として認可され、1984年にはガス状の化学的滅菌剤と して認可されました。
さらにEPAによって滅菌剤としての登録がなされ、現在ではNSF/ANSIによっ て全米規格として、もっとも厳密な無菌性が求められるバイオセーフティキャビネットの滅菌剤に用いる薬剤として認可されています。
日本において「除菌」「殺菌」「滅菌」など微生物を殺滅することを意味する 用語が複数あり、それぞれ定義が異なるように、米国でも同様に様々な単語が 存在します。
この中であらゆる微生物を殺滅することができる「滅菌」に相当す る薬剤を「Sterilizers (Sporicides)」と呼びます。
EPA2009年の登録リストには、除菌・殺菌など微生物の減少を目的とした薬剤 が約5000登録されていますが、それらの中で「Sterilizer」として登録されているのは、わずか40しかなく、そのうちの4つが二酸化塩素の製品です。
このように米国において、二酸化塩素は溶液としてもガスとしても、最も高い殺菌効果を必要とする時に用いられる薬剤として法的に認められています。
EPAにおける具体的な二酸化塩素の使用方法について
以下EPAの文章の概訳を記載します。
EPAの公文書"Reregistration Eligibility Decision (RED) for Chlorine Dioxide and Sodium Chlorite"の3ページ目に同様の記載があります。
(概訳)
1967年FIFRAの権限のもとEPAは最初に液体の二酸化塩素を殺菌剤および滅菌剤として、
農場・瓶詰め加工プラント・食品工場・貯蔵庫・他の工場など以下の使用例などでの使用を認めた。
- パルプ・紙の漂白
- 布地の漂白
- 野菜・果実の洗浄
- 水路の消毒
- 食肉・家禽類の消毒
- 食品加工装置の消毒
- 水の消毒
- 臭いの消臭制御
- 医療廃棄物の処理
- 水道水の消毒
1988年、EPAは二酸化塩素ガスを滅菌剤として製造業・研究機関の設備・環境表面・器具・クリーンルームで用いる滅菌剤として認可した。
液体の二酸化塩素を用いる場合は、スポンジ・モップ・スプレーなどで用い、二酸化塩素ガスは現場で発生させ、密閉した処理対象空間に暴露させた状態を数時間維持する。
上記の記述はEPAのwebサイト上にありますが、この端的な記述からわかるように二酸化塩素は米国において非常に広い分野の用途で法的に認められています。
用途が細分化される二酸化塩素溶液については後段(参照2)にEPAにおける二酸化塩素溶液の用途を原文のまま引用しますので、参考にしてください。
このように二酸化塩素はガスとしてあるいは溶液として、あらゆる細菌・ウイルス・真菌・原生生物による汚染を防ぐ滅菌用の薬剤として、一般的な工場からもっとも厳しい基準が求められるクリーンルームや安全キャビネット内の、滅菌に用いることができる薬剤として、米国でも法的に認められています。